ふみの森もてぎの建築ー図書館建築賞受賞に寄せて

年が改まり「平成」の元号も残りわずかになりました。ふみの森もてぎも足かけ4年目となり、今年の夏には開館3周年を迎えます。引き続き皆様にご愛用いただけますよう、スタッフ一同さらに努力を重ねていきたいと思います。ところで、この新年から図書館の入口右手に「図書館建築賞」と印字された長方形・半透明のプレートが取り付けられています。これは既報のとおり当館が第34回日本図書館協会建築賞に選ばれ、昨年10月の表彰式で副賞として授与されたものです。取り付けにちょっとした工事が必要でお披露目が年を越してしまった次第です。

昨年(2018年)もふみの森ではいろいろなことがありましたが、日本図書館協会建築賞をめぐる動きもほぼ1年にわたるものでした。同賞への応募資格(2017年3月までのオープン)を得て応募の申し込みをしたのが2017年12月。年が明けて書類による1次審査を通過、4月初旬には選考専門委員会の建築専門家3人の現地訪問による審査を受けました。この間、設計事務所や町建設課との協働で、応募書類の作成から現地審査の口頭試問(?)までを終え、どんな結果が出るか内心落ち着かぬものがありましたが、7月下旬、日本図書館協会から長野県の市立小諸図書館とのダブル受賞という朗報が届きました。10月19日の全国図書館大会開会式で、町を代表して古口町長が表彰状を受け取りました。

ふみの森もてぎとは、建築とそこで営まれる文化的事業の総体です。日本図書館協会建築賞の選評(主査・植松貞夫筑波大名誉教授)でも、≪優れた図書館建築とは「建築の質はもとより、そこで展開されるサービスがよく行われていること」が条件となる≫とされ、建築と事業(サービス)の両方が評価されたことは運営に当たる者として心からうれしく思います。ただ、この『森を語る』ではこれまで建物と空間の魅力にふれたことはありますが、うかつにも建築そのものの紹介をしていませんでしたので、あらためて以下に記します。

ふみの森もてぎは、茂木町の市街地中心部、酒造蔵元や病院などの跡地約6,400㎡を敷地として建てられています。鉄筋コンクリート造と木造の部分から成る建物は、地上2階建て(一部1階建て)、延床面積約3,000㎡です。設計は㈱龍環境計画(東京都)、施工は渡辺建設㈱(宇都宮市)、2014年12月に着工、2016年3月に竣工しました。建物の構造材と内装には町有林のスギ、ヒノキの間伐材を用いて「木の空間」を実現し、随所に独自の建築工法が施されているのも見どころとなっています。江戸時代元禄期創業の酒造家の古い蔵の再現・復元を含む切妻屋根の外観は周囲の街並みとよく調和しています。ふみの森を初めて訪れた人からは「木の香りに癒やされる」、常連の方からは「居心地がいい」という感想が寄せられています。なお申し遅れましたが、今回の図書館建築賞より前に、栃木県マロニエ建築優良賞(2016)、全日本建設技術協会・全建賞(建築部門、2017)も受賞しています。

新年といえば、茂木町の成人式が行われた1月13日、あでやかな赤い振袖姿の新成人がおかあさんと一緒にふみの森の図書館を訪ねてくれました。ここに通って受験勉強をした思い出の場所なので成人式には是非来たかったとのことで、その気持ちに職員は「役に立ててよかった」と感動しました。オープンから2年半、ふみの森も少しずつ歴史をつくっています。

参考:第34回日本図書館協会建築賞については『図書館雑誌』2018年8月号に記事があります。

 

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