ふみの森もてぎ落成式

 平成28年7月15日、「ふみの森もてぎ落成式」が行われました。元禄16年(1703年)創業の酒造蔵元ほか、隣接する1900坪の土地に、町有林材をふんだんに活用した「まちなか文化交流館〈ふみの森もてぎ〉」の落成です。棟札によると弘化3年(1848年)という仕込み蔵の梁や柱を活用した“ギャラリーふくろう”に設けられた式典会場には、来賓および招待者、関係者など総勢120名が顔を揃え、玄関前で行われたテープカットまで、茂木町の新しい文化拠点のスタートをお祝いしました。

【古口達也町長による式辞】

宝探しinふみの森

 7月17日、ふみの森もてぎグランドオープンの翌日、図書館には朝からたくさんの子供たちの元気な姿でいっぱい。「宝探しinふみの森」と題されたイベントが開催されました。主催したのは「なでしこの会」で、ふみの森もてぎを支えるサポーター組織の「ふみの森の仲間たち“こだま”の会」に登録しているボランティア団体です。

ふみの森もてぎ、満3歳になりました

「森を語る」前回は今年2月でしたのでかなり間が空きました。5月には天皇の代替わりと改元があり、時代の節目を経てふみの森もてぎは先日開館3周年を迎えました。この間ふみの森では、3月末に『ふみの森もてぎ叢書』を新たに刊行し、平成の終わりから令和の幕開けに「羽石光志歴史画展」、開館3周年を記念して「金子節子原画展」と特別展「茂木文書の世界」を開催しました。この連載が休筆状態にならざるをえなかった出来事を振り返ってみます。

『ふみの森もてぎ叢書』は名前のとおり、ふるさとや茂木をテーマに同一体裁で継続して刊行される予定のシリーズ本です。第1集の書名は『ふるさとに寄せる手紙(ふみ)』、昨年当館が行った「ふるさとに寄せるふみ(手紙)コンクール」の応募作品集です。このコンクールは、ふみの森の「ふみ」に「手紙」という意味もあることにちなんで、ふるさとに宛てた手紙文を募集したもので、茂木町、栃木県のほか全国各地から130点の作品が寄せられました。審査の結果9点が入賞し、10月の表彰式では受賞者による手紙の朗読が大変感動的でした。入賞作品はもとより、寄せられた手紙はどれも家族(故人を含む)・友人や地域・自然などへの熱い思いにあふれ、心を打たれるものでした。これをなるべく多くの人に読んでいただきたくて、入賞作品と一般の部の応募作品、計51編を収録した書籍を編集した次第です。紙の本でしみじみと味わうにふさわしい内容です。是非ご一読を(A5判、159頁、500円)。

 日本画の大家で、特に歴史画の名作を数多く制作した羽石光志(はねいし・こうじ1903-1988)は、現在の茂木町飯野(当時は中川村)の出身で、幼時から東京で育ちましたが、終生茂木を故郷として懐かしんでいました。没後30年の昨年、栃木県立美術館では所蔵作品による記念展示が開催されました。その後ご遺族の意向と同館橋本慎司学芸課長の仲介により、羽石光志の本画4点をはじめ、下図、挿絵原画、スケッチブック、蔵書等、膨大な量の貴重な資料が茂木町に寄贈され、ふみの森に収蔵されることになりました。4月末「羽石光志歴史画展」は寄贈作品4点のお披露目として町内各所に残る羽石作品6点も集めて開催され、初日には橋本氏の講演とご息女羽石典代さん、昌代さんを招いてのトークショーもありました。日本美術史に名を残す存在なのに地元でも知らない人が少なくない画家の業績を知ってもらう機会になったと思います。寄贈された資料は今後の整理と調査研究を経て、ふみの森で展示等に活用するとともに後世に伝えていきます。

 金子節子(かねこ・せつこ)さんは茂木町出身の漫画家。昭和47年(1972)学生時代に少女漫画家としてデビュー、以来47年間、出産・育児のわずかな休筆期間を除き、少女漫画から女性漫画へと第一線で活躍を続けています。その作風は実に多彩で、少女漫画時代の明るい学園スポーツものに始まり、沖縄戦など戦争の悲劇、いじめや引きこもりなど社会問題、女性の生き方や心理、家族の人間関係等々、涙もあれば笑いもある作品を創造してきました。刊行された単行本(コミックス)は既に100冊を超え、女性漫画誌では「ドラマの女王」と称されています。今も毎月雑誌連載の締切りに追われる金子さんにお願いして実現したのが「金子節子原画展」であり、開催初日のギャラリートーク「金子節子と語る漫画・人生・家族」でした。人前で話すのは苦手とおっしゃる金子さんですが、そのお話は作品同様、人間へのあたたかなまなざしと上質なユーモアにあふれるものでした。

 現在その前期が開催中の特別展「茂木文書(もてぎもんじょ)の世界」は、中期・後期と来年1月まで続く長丁場の展示です。茂木文書とは、鎌倉初期から戦国末期まで茂木の地を治めた国人領主・茂木氏に伝わった古文書のことですが、中世東国の歴史を知る上で非常に重要な史料といわれています。この文書は江戸時代初期、茂木氏が臣属していた佐竹氏の常陸国(茨城県)から出羽国(秋田県)への移封に伴い、茂木氏とともに出羽に移り、現在は秋田県の個人の所蔵になっています。今回の展示のために所蔵者のご厚意で文書全86点が、約420年ぶりに茂木に戻り、歴史研究者による1年間の調査を経て、実物の公開に至りました。文書中、最古の源頼朝政所(まんどころ)下文(くだしぶみ)から実に827年、これらの文書群が現存して眼前にあることが奇跡のように思われる展示です。また、文書全点の写真と翻刻、最新の研究を盛り込んだ解説から成る図録『茂木文書の世界』も作成され、好評販売中です(A4判、166頁、1500円)。

 以上、少し長くなりましたが、書籍の刊行も展示の開催もふみの森もてぎが3年前にこの地に誕生し、成長を続けていることの現れかと思います。満3歳になればもう赤ちゃんではありません。これからはよりしっかりした足取りで前進できるよう、決意を新たにしているところです。

2019年 (令和元年)
10月23日(水)
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