森を語る
初代館長関誠二氏が、ふみの森に寄せる思いを語ります。
森に人は集う―新年度にあたって
このほど、ふみの森もてぎ図書館は平成30年度「子供の読書活動優秀実践図書館」に選ばれ、「子ども読書の日」の4月23日に文部科学大臣表彰を受けることになりました。この表彰は、平成13年公布の「子どもの読書活動の推進に関する法律」に基づく国の事業の一環として、平成14年から続けられているものです。開館から2年足らずの当館が栄に浴すことになり、望外の喜びです。
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MCC(Motegi Categorization and Connection)-まとめと補足
この連載の10~12では、図書資料を中心に図書館における分類についてお話ししてきました。要点を簡単にまとめれば次のようになります。
・図書館では資料(蔵書)を何らかの基準(分類法)によって書架に並べる(配架)ことが不可欠である。
・分類-配架は利用者がわかりやすく使いやすいものであると同時に、利用者に資料との出会いや発見をもたらすような工夫がされていることが望ましい。
・分類法は恣意的であってはならず、有用性・利便性とともに論理性・体系性を確保する必要がある。
・以上を踏まえた上で、ふみの森もてぎ図書館は書架に魅力をもたせ、図書館の個性を打ち出すために独自分類であるMCCを考案、採用した。
・MCCは、資料の利用目的や用途によるカテゴリー群と、<世界>の事象に即したカテゴリー群によって構成される。
ここでMCCのCategorization and Connectionという語について説明すれば、CategorizationはNDCのClassificationとほぼ同義で「分類」のことですが、後者が十進法の階層構造を連想させるため、あえて前者を選びました。Connectionは「つながり」「結びつき」「関連」を意味しますが、これは、資料を各カテゴリーに「分ける」だけでなく、各カテゴリーの間を「つなぐ」ことが重要であるという認識に基づくものです。資料をただ所定の書架に配置するだけでなく、書架上の資料相互のつながり、離れた書架の別のカテゴリーとの関連などをできるだけわかるようにしていきたいという思いの表れでもあります。
最後に、図書館を使い慣れた方から発せられた「NDCを使わないでどうやって本を探すんですか」という疑問にお答えします。ほとんどの公共図書館は、資料1点ごとにNDCの分類番号と著者の頭文字を組み合わせた請求記号を付け、それに対応する書架に資料を配置します。MCCの場合、カテゴリーを表す記号は付いていますが、これは大体の場所を示すに過ぎず、位置を特定するものではありません。当館は「チェンジマジック」(ケープレックス社)を基にした図書館システムの導入により、資料1点ごとのデータにそれが置かれている書架の棚板(1枚単位)を位置情報として入れることが可能になっています。したがって資料の位置は請求記号ではなく、データの棚情報によって決まり、実際の業務では資料のカメレオンコードをタブレット・パソコンのウェブカメラで読み取ることで配架作業を行っています。大丈夫、NDCがなくても本は探すことができ、棚に戻せるのです。
チェンジマジックとカメレオンコードの話はまた稿を改める必要があるかもしれません。ここでは北海道の幕別町図書館がパイオニアとして導入したシステムに倣うことで、茂木町はNDCを使わず、MCCの分類-配架を実現したということを申し上げて、分類の話をひとまず終わります。
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楽は蔵に満ちて
図書の分類の話、まだ終わっていませんがここで1回休んで、去る11月3日、ふみの森もてぎのギャラリーふくろうで開かれたコンサート「フルートとチェロの調べ」について書きたいと思います。秋晴れの文化の日、茂木では「もてぎフェスタ2017」と銘打って、「里山ウォーク大会」「うまいもの市」「JAまつり」が同時に開催され、町は大いににぎわいました。コンサートはフェスタの一環として企画されたもので、茂木町出身で町の「ふるさと応援大使」を務めてくださっている栗田智水(くりた・ともみ)さんのフルートと、独奏・室内楽・オーケストラの各分野で大活躍中の金子鈴太郎(かねこ・りんたろう)さんのチェロという、まことに豪華な協演が実現しました。
コンサートは、エルガーの「愛のあいさつ」に始まり、J.S.バッハ、モーツァルトからピアソラまで、卓越した演奏による名曲の調べが「ふくろう」の木の空間にやわらかに響き、聴衆はクラシック音楽の醍醐味を堪能しました。演奏の素晴らしさはもとより、お二人とも気さくでフレンドリーな雰囲気で、軽妙なトークも会場を和ませていました。金子さんはチェロについてわかりやすく解説したあとで、プログラムにはない現代曲、ジョヴァンニ・ソッリマの「アローン」の独奏も披露してくれました。
この日、ふみの森の駐車場や周辺道路はフェスタの会場の一つでしたので、そこで開かれたご当地アイドルや和太鼓のパフォーマンスの音響が建物内に響いてくる場面もありましたが、栗田さんは「アイドルや太鼓に負けずにやりましょう」と明るくいなして、すてきなコンサートは無事終了しました。厳粛なクラシックのコンサートとはだいぶ趣の異なる、人の出入りとざわつき感のある音楽会でしたが、お二人の寛大さにも助けられて、まさに音楽という芸術文化を通じてまちなかに交流が実現したひとときでした。
ふみの森もてぎの敷地には、元禄16年(1703)創業の日本酒蔵元「島﨑泉治商店」がありました。現在、ふみの森もてぎの建物を北側駐車場から眺めると切妻屋根の蔵が連なっているように見えますが、これはこの場所の歴史をしのばせる設計上の狙いによるものです。なかでも、ギャラリーふくろうは、弘化3年(1846)に建てられ最近まで酒造りに使われていた仕込み蔵を解体し、柱や梁を再利用して復元した木造の建物です。歳月を経た木材が支える高い天井と木造建築の空間によるものか、フルートとチェロの楽の音は、私の「素人耳」にもやわらかく、ふくよかで豊かな響きと感じられ、このギャラリーはアートを観るだけでなく、室内楽などを聴く場としても活用できるという思いを強くした次第です。日本の名指揮者・朝比奈隆(1908-2001)の著書に『楽は堂に満ちて』という随筆集がありますが、穏やかな秋の午後ふみの森では楽が藏に満ちていました。
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- 作成者:ふみの森もてぎ
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