ふみの森とアート

 2017年、ふみの森もてぎのギャラリー展示は「松﨑融 木漆展 ~漆黒の海をゆく 小舟のように~」で幕を開けました(ギャラリーふくろう 1月5日~15日)。松﨑融(まつざき・とおる)さんは東京都出身で茂木町在住の木漆工芸作家、素材の木を手彫りで造形し、漆を塗って仕上げた工芸作品は国の内外で高い評価を得ています。各種の器、盆、額など大小さまざまに丹精を込めた作品が、蔵の木質空間と調和して展示され、訪れる人にアートと出会うよろこびを体験させてくれることでしょう。茂木で創作活動を開始して30年になる松﨑さんが、この町で初めて開く個展です。皆様のご来場をお待ちしています。 

昨年7月、ふみの森もてぎのオープニングに際しては、同じくギャラリーふくろうで茂木町出身の木口木版画家・見目陽一(けんもく・よういち)さんの個展「見目陽一展 ~時空の言霊~」を開催しました。茂木にゆかりの深い芸術家である見目さんと松﨑さんの作品展を、開館、新年という節目となる時期に開けたことはふみの森の事業としても大変有意義でした。ちなみに、お二人はともに「もてぎふるさと応援大使」を務めてくださっているほか、町の生涯学習や各種イベントにも尽力され、芸術文化のみならず茂木のまちづくりに多大な貢献をされています。 

ふみの森には「ふくろう」「こもれび」「質蔵」の3つのギャラリーがあり、絵画、工芸、書道、写真など、プロ・アマを問わず、さまざまな作品展がほぼ常時催されています。ふみの森は正式な美術館(アート・ミュージアム)ではありませんので、現在のところ美術品の収集・収蔵はしていません。ただ、茂木からは島﨑雲圃(しまざき・うんぽ 1731-1805)、古田土雅堂(こだと・がどう 1880-1954)、羽石光志(はねいし・こうじ 1903-1988)といった日本美術史に名を残す画家が輩出しています。将来的にはこれらの画家の作品を茂木の歴史と文化を伝えるものとして、ふみの森に収蔵し、展示できればと考えています。 

芸術(アート)の創造には豊かな天分と並々ならぬ研鑽が必要です。誰でもが一流のアーチストになれるわけではありません。しかし一方で、手ほどきを受けて(あるいは独力で)芸術の技法を学び、自分の作品を生み出す道も多くの人に開かれています。さらに、さまざまな芸術作品に接してこれを鑑賞することは、誰にでも可能なたのしみであり、人生を豊かにしてくれるものといっていいでしょう。いずれにせよ人はアートと出会うとき、先人の創造した価値あるもの(文化)と交流することになります。文化交流館ふみの森もてぎはこれからも、ギャラリーを通じてアートに親しめる空間を用意し、図書館を通じてアートの制作や鑑賞に役立つ資料を提供していきます。

2025年 (令和7年)
5月1日(木)
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