〈1〉「配信」の時代に〜オープンから2週間のふみの森
7月16日にオープンした「ふみの森もてぎ」は、連日、町内外から多くの方々にご来館いただき、お蔭様で活況を呈しています。これから図書館の資料や展示の内容をさらに充実させて、皆様のご期待に応えていきたいと思っています。
ところで、ふみの森のオープン後まもなく、ポケモンGOの国内配信が開始され、大きな話題になっています。私自身はポケモンGOとは無縁ですが、「配信」という言葉にはある種の感慨を覚えました。かつてWindows95やハリー・ポッターの新刊が売り出されたとき、それは「発売」であり、人はお店に行列してモノを買い求めたのです。「発売」から「配信」への移行は、すべてがデジタル化されインターネットを通じて送受信されるいまの時代を表しているといえるでしょう。
たしかに、いまや書籍や雑誌から音楽や映像まで、すべてがネットを通じて入手できます。リアルな場所や実体のあるモノがなくても、さまざまな情報や知識が得られ、文化にふれられる時代です。このような時代にふみの森はまさに現実の空間として茂木の地に出現しました。その空間には実体のあるモノとして、目にみえる芸術作品や歴史資料が展示され、手にとれる本や雑誌、CD、DVDが書架に並んでいます。これははたして時代錯誤なのでしょうか。私はそうは思いません。ネットとデジタルの利便性と有用性(そして創造性も)は疑えませんが、ネットには向かない、ネットではできない創造的空間があると思うからです。
ふみの森を訪れた人は、ここでモノたちの一覧性、モノとモノが並ぶ類縁性、モノの集まり同士の相互関係性を体感できるでしょう。そのような出会いはまた、人それぞれに何らかの発見につながるはずです。さらに、モノとの出会いだけでなく、人と人との出会いと交流もリアルな空間だからこそ可能になります。
「配信」の時代に、しっかりした手ごたえのある文化施設として、豊かな森に成長できるよう努力を続けたいと思います。