ふみの森もてぎ落成式

 平成28年7月15日、「ふみの森もてぎ落成式」が行われました。元禄16年(1703年)創業の酒造蔵元ほか、隣接する1900坪の土地に、町有林材をふんだんに活用した「まちなか文化交流館〈ふみの森もてぎ〉」の落成です。棟札によると弘化3年(1848年)という仕込み蔵の梁や柱を活用した“ギャラリー...

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宝探しinふみの森

 7月17日、ふみの森もてぎグランドオープンの翌日、図書館には朝からたくさんの子供たちの元気な姿でいっぱい。「...

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自慢したいコレクション―雑誌『窮理』

ふみの森もてぎ図書館の雑誌コーナー、奥の方にちょっと小ぶりな雑誌が静かなたたずまいを見せて立っています。白地の表紙には、中国の書の大家・褚遂良(ちょすいりょう)の遺墨から採字した「窮理」という誌名が黒で影印され、併記のローマ字により「きゅうり」と読むことがわかります。表紙絵は毎号変わり、表はさわやかな自然の風景、裏には小さな愛らしい花が描かれ、目をたのしませてくれます。これは2015年7月に創刊され、今年7月に第10号が刊行された科学随筆誌『窮理』、発行所は足利市にある窮理舎です。

窮理舎を主宰し、この雑誌を編集・発行している伊崎修通(いざき・のぶゆき)さんは、『窮理』を「物理系の科学者が中心になって書いた随筆や評論、歴史譚などを集めた、読み物を主とした雑誌」と定義しています。そして「窮理=理を窮(きわ)める)」については、中国古典に由来する語が江戸期の日本で「現在の物理学に近い内容を指すものとして用いられ」、幕末・明治期には緒方洪庵・福沢諭吉らによって「西洋科学の根幹学問として広められ」たが、次第に「物理」という語に代わっていったと説明しています。雑誌『窮理』を「先人の物理学者に倣って、科学の視点に立ちながらも、社会や文明、自然、芸術、人生、思想、哲学など、幅広い事柄について自由に語る場」とするのが、伊崎さんのめざすところのようです。

創刊号から最新号までの内容を見わたせば、伊崎さんの思いが見事に実現しているのがわかります。物理学を中心に大家から若手までたくさんの科学者が、科学や物理学にとどまらず音楽や文学、落語にいたるまで、実に多彩な文章を寄稿し、そのどれもが興味深く、読みやすい内容になっています。また、創刊号から続く「随筆遺産発掘」という連載では、中谷宇吉郎、寺田寅彦、湯川秀樹、石原純、朝永振一郎、吉田洋一など錚々たる顔ぶれの過去の随筆を再録し、丁寧な解説を付けて紹介しています。最新号では、ニュートリノ研究でノーベル賞の最有力候補といわれながら病に倒れ、今年が没後10年となる戸塚洋二氏の晩年の文章が掲載されています。物理学の門外漢である私のような者でも引きつけられる中味の濃い雑誌です。

『窮理』の魅力は文章の内容だけではありません。この雑誌、科学をテーマとしながら、本文はすべて縦書き、表紙を右から開いて読んでいきます。しかもフォントは、随筆本文が楷書体、注記は明朝体と使い分けています。冒頭に紹介した表紙絵(これも物理学者の作品)の印象と相まって、趣味のよい美術や文芸の雑誌かと思うほどです。そのほか本文中のカットや懇切な執筆者の紹介など、随処に編集者の行き届いた気配りが感じられます。伝え聞くところでは、伊崎さんは大学で物理学を専攻し、卒業後は出版社で編集の仕事に携わってこられたそうで、ご自身の経歴と経験を活かして「科学随想の歴史を伝承し、文理の壁を取り払う」(窮理舎ホームページ)ことに挑戦しているわけです。このような瀟洒(しょうしゃ)で典雅な雑誌が、森蔭に人知れずに咲く小さな花のように、大手出版社の目立つ表紙の雑誌たちにまじって、雑誌架の片隅にそっと置かれています。図書館のコレクションとしてこの雑誌をもつことを誇らしく思うとともに、多くの方に手にとっていただければと願っています。

ちなみに伊崎さんは茂木町の出身で、ご実家は町内の下新町で商店を営んでおられます。ご尊父の利文さんは能書家で、ふみの森もてぎ建設時の棟札、ふみの森の入口や門の施設名の文字を揮毫(きごう)していただきました。修通さんは毎年夏の祇園祭には帰省して下新町の山車で囃し方を務めています。今年も太鼓を叩く勇姿が見られました。

*窮理舎ホームページ https://kyuurisha.com/

 

2018年(平成30年)
10月17日(水)
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