ふみの森もてぎ落成式

 平成28年7月15日、「ふみの森もてぎ落成式」が行われました。元禄16年(1703年)創業の酒造蔵元ほか、隣接する1900坪の土地に、町有林材をふんだんに活用した「まちなか文化交流館〈ふみの森もてぎ〉」の落成です。棟札によると弘化3年(1848年)という仕込み蔵の梁や柱を活用した“ギャラリー...

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宝探しinふみの森

 7月17日、ふみの森もてぎグランドオープンの翌日、図書館には朝からたくさんの子供たちの元気な姿でいっぱい。「...

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MCCはNDCとどこが違うのか 

図書館における図書の分類についてもう少しお話ししたいと思います。そもそも人間はなぜものごとを分類するのでしょう。「なぜ」という日本語は、「何ゆえに」(理由・原因)と「何のために」(目的・意図)の両方を問う言葉かと思われますが、分類の理由としては、外界の個々の事物・現象がつねに何らかの共通性と差異をもって存在し、人間がその共通性と差異を知覚・識別できることが挙げられます。また、分類の目的としては、人間がものごとを処理するのに分類が便利で役に立つからといえるでしょう。いいかえれば、分類には客観的な事象に対して理にかなっていること(論理性・体系性)と現実的に役に立つこと(有用性・利便性)がともに必要なのです。

もっとも個人レベルでの分類、例えば机上の書類や趣味のコレクションを分類するにあたっては、もっぱら本人の使いやすさや気持良さで処理すればいいので、難しい理屈は要りません。しかし図書館の資料分類はちがいます。図書館の大小、資料数の多寡を問わず、図書館資料が人類の知の集積であり、その内容が森羅万象に及ぶものである限り、図書館の分類対象は哲学的な意味で<世界>そのものであり、分類法はやや大げさにいえば現時点における図書館の世界解釈といってもいいのです。 

このような観点でみるとき、NDC(日本十進分類法)に限らず、そのもととなったDDC(デューイ十進分類法)にも大きな違和感をもたざるをえません。これらの分類法は0から9の数字で10区分を繰り返して対象(資料)を細分化していきますが、どう考えても世界は整然と10区分ずつに分けていけるような体系や構造にはなっていません。これらの分類法は、十進法という分類の技術的利便性と対象である世界の客観的論理性を混同しているようにみえます。 

その上、十進分類法の基本区分には学問の各分野が当てられていますが、その学問分野は基本的にDDC考案時の19世紀後半のもので、淵源をたどれば哲学者フランシス・ベーコン(1561-1626)の学問分類に行き着きます。図書館の資料がもっぱら学問的著作だった時代はそれでよかったかもしれません。しかし今では学問の枠に収まらない膨大な情報・知識・言説が図書というかたちをとっています。21世紀の現在、古典的な(=大昔の)学問分類を前提に現実の事象を10区分で切り分けるのは、分類の論理性・体系性からも無理が大きいと思わざるをえません。 

もうひとつ、分類の有用性・利便性からいえば、DDCもNDCも資料の使いみち、使い勝手という発想がありません。これは成立の時代背景を思えばやむをえないことでしょう。大規模な図書館の大量の蔵書を細かく整然と分類・配架する必要があり、資料の利用は申し込みを受けて書庫から探し出して提供するという時代でした。どのような資料がいま求められているか、公開書架にどのように配架すれば「発見」や「おもしろさ」があるかという発想は希薄だったはずです。時代が移って現在、ほとんどの公共図書館が公開書架の一部にNDCを崩して特集コーナーを設けていることは前回(「森を語る」11)ふれたとおりです。 

ふみの森もてぎ図書館はいまのところ蔵書5万冊の小さな館で、資料のほぼすべてが公開書架に配架されています。新設館なのでNDCで分類された大量の旧蔵書もありませんでした。これを奇貨として考案・導入したのがMCC(Motegi Categorization and Connection)で、その基本は、資料の利用目的や用途を重視し、学問の分類を先にするのではなく、現実の事象と相互の関係性を意識した分類ということに尽きます。その概要は前回掲載のMCCの主要部分をご覧いただければと思いますが、A~Cは目的や用途による分類、D~Hは事象に即して宇宙、地球、自然、環境、世界(各国)、日本、社会、経済、産業、情報、文化(学問・思想・芸術)、歴史、人間といった基礎的カテゴリーに沿った分類になっています。 

分類に「完璧」と「絶対」はありえません。完璧な分類法はなく、絶対に正しい分類もないということです。1冊の本が見方によって複数の主題・特性をもつことはよくありますが、図書館の本は原則1タイトル1冊限りです。書店のように関係する棚のすべてに同じ本を置くことはできません。決断して多数の書架の1つの棚に本を置くわけですが、結果的に類似の本が別々の棚にあるように見える場合も生じます。基本的には分類による配架だけで目的の資料に到達できるわけではないのです。 

このように分類はある意味で最初から限界をもっています。しかし来館者が接する書架上の蔵書が図書館の「顔」である限り、個々の資料をそこにどう並べていくかは、図書館の見識と創意工夫が問われる場面だと思います。私どものささやかな試みは、もとよりNDCの精緻な体系に比すべきものではありません。MCCにもまだまだ整備と改良の余地が残っていますが、小さくても訪れる人が書架を見てたのしいと思えるような図書館をめざして努力していきたいと思っています。

2017年(平成29年)
12月17日(日)
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